「兄やが狙うの、エメラルドって言ってたっけ?じゃあ多分、落胆して帰ってくるね。」
顔をしかめて黒コゲクッキーを齧りつつ呟くアクィ。
「エメルが、そう簡単に捕まるとは思わない。」


〜Rolling Stone , Reachable Hand 2〜


「ああ、アレならフイ兄が換金に……」
「別のお客様が買い取りになられましたよ。」
「友人が欲しいと言うんでね。」
「有能な部下の誕生祝いにした。」
「……息子が持っていったかもしれん。」
「あ!しまった、同級生の子にあげちゃった!!」


「…………手のかかる奴だなエメラルド!!」
大きな溜め息をついて、新がテーブルに突っ伏した。
「流石は『風のエメラルド』ね。まったく捕まる気がしないわ。」
「ま、エメルだしねェ……仕方ないんじゃないかな。」
「でも、コレで場所は特定できたんでしょう?」
新が少しだけ顔を上げ、3人を見る。3人が頷いた。
「今度こそ逃がさねェ。場所は恋塚家。ゲーム、スタートだ!!」


音も無く、恋塚家の窓が開く。快盗Aがゆっくりと侵入した。
「確か、宝石専門のドロボーだったな。狙いは……このエメラルドか。」
「げっ、やな……!!」
窓の傍に立っていた柳が、手の中のエメラルドを少しだけ上に放った。

その瞬間、エメラルドが消え去る。
「コレはオレに渡したまえ、君らには価値を見出せん。」
「なっ……誰だ、お前!!」
エメラルドを握って微笑む突然の闖入者に、柳ががなる。
闖入者が小さく溜め息をついた。
「本名を名乗る必要はねェだろ?そうだな……怪盗真紅、とでも呼んでくれ。」
「怪盗……真紅?」
「では。同じ『運命』を追うなら、また会うこともあるだろう。」
「「「逃がさない。」」」
真紅の廻りに氷の壁が出来る。それが一瞬で融け、残された水が無数の針に変わる。
「コレ、は……」
「スプラッシュ・エッジ!!」
水の針が真紅の右手を傷つける。思わず離したエメラルドを、快盗Aがキャッチ。
快盗Aの横に、3人のデステニィストーンが並んだ。
「お前の集めた運命たちか。今日は運命に救われたな。けど……また会おう、影守新。」
不敵な笑みを浮かべて、怪盗真紅が…消えた。


「ワケ判らなくなりそうだからYesかNoで答えてくれ。」
「…Yes。」
「お前、ホントに新なんだな?」
「…Yes。」
「で、確かコイツらは新のトコの同居人だよな?」
「…Yes。」
「高校生の家に居候ってのもおかしいとは思ってたけど……コイツらが、宝石人間だって?」
「……い、Yes?」
「何でもかんでもYesじゃワケ判んねェんだよ!!」
同級生2人が、真紅の言い残した言葉の所為で口論になっている。
予期せず正体をばらされてしまったのは痛い。
「大体なんだよ宝石人間って!!」
「だからデステニィシリーズだっつの。何なら証拠を見せようか?」
快盗A……新が、エメラルドを強く握る。
「『我が名は影守新、汝の新たなる所有者。……ヒトの容貌となりて、ここに顕現せよ。』」

「久しぶり、エメル。こんなところで会えるとは思わなかったよ。」
「アクィ?!久しぶりだな、ベリル兄弟の再会!」
デステニィ男子組が笑いあう。新と柳が色々な疑問を無視するために溜め息をついた。
「キャパオーバーだぜ全く……妹が起きてこなくて良かったよ。」
「…柳。じゃあ最後にひとつだけ、YesかNoで答えてくれ。オレのこと、信じてくれるか?」
新のその言葉に、柳は目を丸くして……そして、頷いた。

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