「1、2、3……一般家庭に警備員が何人いんだよ、流石は綜芸種智院だな。」
塀の上から庭を見下ろし、ため息を吐く新…改め、快盗A。
「アホアクィめ、いい加減機嫌直してくれただろうな?」


〜Shining Gem , Hiding Sadness 2〜


「こないだの3倍なんて冗談じゃねェしなァ……気付かれねェように行こっと。」
新が、腕に抱えていた猫を庭の中に投げ入れる。
猫が華麗に着地したと同時に、警報が鳴り出した。
「警報?!何事だ?!」
「猫が庭に入り込んだようで……」
「猫ォ?何だ、さっさと捕まえないか!!」
「ダメです、動きが早すぎて……あ、そっちには行くな!!」
警備兵が混乱している隙に、屋敷に向かう。
ピッキングで窓を開けて潜り込むと、トイレだった。
「ルビーは『望に買った』ってんだから、望の部屋かな。確かアイツの部屋は2階の南側……」
地図を片手に考え込む。外よりは少ないだろうが、中にも警備兵は居そうだ。
「水、出しっぱにしたら警報がなるとか言ってたっけ……」
水道の蛇口を捻って、警報が鳴る前にトイレを後にする。
数分後、記憶どおりに警報が鳴り出した。


「失礼しま〜っす。」
「ノックなしなんて、本当に失礼だね……ドロボーさん。」
「あれ、起きてたか。」
「あちこちで警報を鳴らして混乱させる作戦だったんだろうけど、うるさくて寝られないよ。」
「ああ、確かに。じゃ、単刀直入にお願いするぜ。……そこのルビーが欲しい。」
ピクッ と反応し、ベッドの上の望が快盗Aを振り向く。
仮面の向こうの眼と、眼差しが交わった。
「このルビーは、父様に買ってもらった大切なモノだ。」
「大切なのは、ルビーじゃなくて『父様に買ってもらった』コトだろ?」

2人が、微笑んだ。

「警備兵!!」
「もらってくぞ!!」
望が警報を鳴らすと同時に、快盗Aがケースを割ってルビーを掴む。
そのまま窓を蹴破り、ベランダに出てから部屋を振り向く。
幾数の銃口が、快盗Aに向けられていた。
「終わりだ、ドロボーさん。警察に突き出して差し上げよう。」
「……折角のお誘いなんだけど、遠慮しとくよ。」
「発砲許可…但し、殺すなよ。」
警備兵が引き金を引く。
……銃声は、鳴らなかった。
「……え?」
「火薬が湿ってる?!」
「それでは、綜芸種智院の皆様。……御機嫌よう。」
快盗Aが、ベランダから空へ飛び出した。


「……助かったよ、アクィ。まさか銃携行とは。銃刀法どこ行ったんだ?」
「僕があと少し遅かったら死んでたね、兄や。貸しは大きいよ?」
「そうだな……朝の件、コイツで水に流して欲しい。」
新が、手の中のルビーを見せる。アクィが、それを見て苦笑した。
「それは、アタリなの?」
「『我が名は影守新、汝の新たなる所有者。……ヒトの容貌となりて、ここに顕現せよ。』」
「……ハズレ?」
「いいや。」
突如、ルビーから光が放たれた。

「……オハヨウ、僕の大切な友達。僕はアクィ。水のアクィ=ベリル。君は?」
「え、えっと……ルビィ……ルビィ=コランダム。」
「成功したのね、新。……『火のルビー』ね。私は氷のオパール、オペラ=コモンホワイト。」
「オペラ!……ヒトとして生活できるように、名前つけてやんなきゃな。」
「ま、今日はお祝いね。シャンメリー買ってあるから、ケーキ焼いてよアクィ。」
「え?えっと……」
「今から?家に材料あったかなァ……生クリーム、買ってこなきゃ。」
「あの……お祝いって、私の?」
「当然だろ!3人目の同居人だ。新生活の始まりだぜ?」

「「「これから宜しく、ルビィ。」」」

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