「バカ兄や、バカ兄や、バカ兄や……!!」
朝の一幕をいつまで引き摺るつもりだ、と心のどこかで自嘲する。
「兄やを許すタイミング、判んなくなっちゃった……どうしよう、エメル。」


〜Shining Gem , Hiding Sadness〜


「兄や!学校だぞ、起〜き〜ろ〜!!」
「アクィ……家事万能な弟キャラはもっと大人しめの方が……」
「寝言で人のダメ出ししてないで起きろよバカ兄やー!!」
アクィが新の毛布を勢いよく剥ぎ取る。新が、ベッドから落ちた。
ゴンッ…と新の頭から鈍い音。
「いっ……ってェ!!何しやがる、いくらなんでもヒドいだろアクィ!!」
「うっさいひどいのはどっちだバカ兄や!!」
「…オペラ、俺なにかしたっけ?」
「寝言でアクィに駄目出し。」
え゛、と呟いてアクィを振り返る新。それと同時にプイと顔を逸らすアクィ。
……やばい、けっこう本気で怒ってる。
「あ、アクィ!!何つったか判んねェけど、俺はそのままのアクィが
「さっさと学校行ったら?兄や。あ〜あ〜、兄やがそんな人だなんて〜。」
ピシャッ!! アクィが自室(正確にはオペラと共同)に篭もる。
……後に取り残された新を、取り敢えず学校へ行かせるオペラだった。


「う〜…そんなつもりじゃなかったんだ〜……!!」
「ウザいよ影守くん。」
「うるせェよツッチー。」
「誰がツッチーだ。……同居人と喧嘩でもしたのか?」
無言で顔を背ける新に、琥珀が苦笑する。そして、クラスメイトの1人を指差した。
「綜芸種智院くんが、こないだ家族と喧嘩の仲直りをしたらしい。体験談が聞けるかもよ?」

「……ああ、あの時は父様が折れてね。ルビーを1つ買ってもらったんだ。」
(つ・か・え・ねェー!!)
心の中で盛大に愚痴る新。貧乏学生は辛いのです。
「装飾も何もない、ただ磨かれてカットされた…って程度のルビーなんだが。」
「…へェ、珍しいじゃん。それじゃあ望の家が買うにはあんまり高くねェだろ?」
「僕も最初は不満だったんだけどね……不思議な能力でもあるみたいに、魅せられてね。」
ぴくっ、と新が反応する。望がそれに小首を傾げる。
「いや……流石は不思議が集まる街だな。」
「…そうだね。不思議なルビーだよ、アレは。」
(……見つけたかも、知んねェ。)


「アクィ!……は、まだアマガエル?」
「ええ、アマテラス状態。…何かあったの?」
「見つけたかも。俺のクラスメイトがな、不思議なルビーを買ったそうだ。」
ピクリと反応して、読んでいた本を閉じるオペラ。
それに苦笑で返す新。…部屋の空気が、少しだけ変わった。
「行ってらっしゃい。あの子は私がなんとかしてあげるわ。」
「……ん。頼むな、オペラ。場所は綜芸種智院の屋敷、帰りは遅くなる。」

「……アクィ。聞いてたでしょ?」
新が出て行ったアパートで、自室に篭もった『弟』に声をかける。
遮音性の低いボロアパートの壁だ、少し声を大きくするだけで届くだろう。
「また『兄』と離れ離れになりたいの?」
「エメルのことは関係ないだろ!!」
「…貴方がデステニィシリーズを追う一番の理由が、関係ないとは思わない。」
壁の向こうから、沈黙が返る。
やがて、いつもの服にウェストポーチを付けたアクィが出てきた。
「ちょっと、行って来るよ。」
「場所は……新に付いてる私たちの気を辿れば判るわね。」
「僕の感情をまるっきり無視したご高説どうも、貸しは高いよ?」
「あら、むしろ私が貸したほうだと思うんだけど?」

「じゃあ、コレで貸し借りナシだ。行ってきます!!」

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