「…ちっ、ハズレか。アクィ!換金してどっかに寄付!!」
1人の黒尽くめの少年が、もう1人の白い水兵服の小さな少年に赤い宝石を投げる。
「それからオペラに、今から帰るから風呂沸かしとけって連絡しといてくれ。」


〜Everyday Occurrence , Slight Difference〜


「兄や!起きてよ兄や!!今日は7時半に起きるんじゃなかったの?アレ?どうだっけオペラ!」
水兵服の少年が、ベッドで寝ている黒尽くめの少年を揺さぶる。そして、テーブルについた女性を振り返る。
「アクィ、流石に起床時間ぐらいは覚えてなさいな…。それから二日酔いで頭が痛いの。大声出さないで?」
「二日酔いは昨日、ボクらが仕事中にお酒飲んでたからだろ?自業自得だよ!!」
「うるせェ…昨日の仕事で疲れてんだよ、休ませろ。」
ベッドで寝ていた少年が上半身を起こして唸る。水兵服の少年…アクィが、少年を振り返る。
「兄や!起こせって言ったのは兄やだよ!!今日は学校だろ?朝御飯食べて支度しなよ!」
う〜、と唸りながらテーブルにつく。まだ眠たい目をこすっていると、アクィが御飯を少年の前に置いた。
「居候に何もかもやらせる家主ってどういうことかしらね?」
「何もしねェ居候が何言ってんだよオペラ…アレ?なぁアクィ、俺昨日卵焼きリクエストしなかったっけ。」
「なんでそんなことばっかり覚えてんの?!今から作るから先に食べ始めててよ!!」


「う〜、眠ッ!昨日、わざわざハズレの警備の突破に時間掛けすぎたな……。」
制服に身を包んだ少年が自分のクラスへと入る。霜天高校1-3。クラスメイトは何故か名前一文字が多い。
「はよっ、どした?眠そうだけど。」
「オハヨ柳。ちっと昨日ゲーム頑張りすぎたみてェ。」
「ゲームぅ?なになに、何やってたんだ?」
「オハヨウ、志惟。そんなに食いつかれても困るんだけど……」
「まったく、警備が薄いからこうなるんだ。僕の家が狙われたなら、この3倍は配置してやろう…。」
「オハヨ〜…何を言ってんだ?望。」
「お早う御座います。綜芸種智院さんは、昨日の窃盗事件のことを言ってるんですよ。例の…快盗A?」
「オハヨウゴザイマス、聖。その堅ッ苦しいのどうにかなんねェの?」
「お早う、今日は遅かったね。もうすぐ先生来るよ?」
「オハヨー、小鳥遊!ちょっと昨日、ゲームを頑張りすぎちゃって。」
クラスメイトたちと軽く挨拶をして、自分の席に着く。隣の席の茶髪の少年が読んでいた本を閉じる。
そして、まったくの無表情で少年の方を振り向いた。
「自業自得だね。いくら休日だからって、次の日に学校があることは判ってただろう?」
「うるせェぞ、土屋。テメェはまずその捻くれ曲がった性格をどうにかしやがれ。」


「アクィ、ただいま。頼まれた食材、買ってきた。」
「当たり前だろ?今日の晩御飯は兄やのリクエストなんだから。」
がさりとテーブルにポリ袋を置き、冷蔵庫を開ける少年。アクィがテーブルのポリ袋を覗き込む。
「ん。良いの買ってきたね。そういえば、オペラに会わなかった?まだ帰ってきてないんだよ。」
「あ〜?いや、会ってねェな。」
「いくら何でも遅すぎるよね…兄や、探してきてよ。その間に晩御飯、作っちゃうから。」
にっこりと笑うアクィの顔に、探しに行かなきゃ作らない、と書いてある。少年がうな垂れた。
「今日は仕事に行ける情報が手に入んなかったしなぁ……イッテキマス。」
「ん、行ってらっしゃい♪」


「オペラ!!どこ行ってたんだよ!!」
「お酒、買いに行ってたのよ。良いのが手に入ったわよ、美味しいのよね〜黒真珠♪」
黒い洋服の女性…オペラが、笑う。周りに人が居ないから、少年も本名で呼んでいる。
「お前なぁ…二日酔い直後に酒飲もうとする馬鹿が何処に居る!!」
「あら、失礼ね。まぁ、馬鹿は否定するけれど、此処に居るわ。」
「ちょっと一発殴って良いかなぁ、オペラさん?」
グッと右拳を握る少年。そこに怒りマークが見える。
「あれ?こんなところで珍しいね。何やってるの?」
「小鳥遊!あ〜、俺は居候を探してて。そっちは?」
「家、この近くなの。ちょっとコンビニに行ってて。…あ、そうだ。言おう言おうと思ってたんだけど…」
にこっと笑う小鳥遊。漫画なら、きっと背後にキラキラオーラが出ているだろう。
「影守くん、クラスの他のみんなのことは下の名前で呼ぶでしょ。私のことも、葵、で良いよ?」
「え?そ、それじゃあ……葵…ちゃん、で。そうだ、じゃあ俺も下の名前…新、で呼んでくれるか?」
「…うんっ。それじゃ、また明日学校でね、新くん。」
「また明日、葵ちゃん。」
手を振って、小鳥遊…葵が闇に消える。オペラがくすくすと笑った。少年…新が、怪訝そうに振り返る。
「…何だよ、オペラ。」
「あの子が好きなのね、新。……けどあの子、貴方の幸運の女神ってわけじゃなさそうだけれど。」
「はっ…何言ってんだよ!!前半も後半も!!特に後半!!」
「別に〜。さ、帰りましょうか。アクィが首を長くして待ってるわ、きっと。」


それは、日常と変わらない風景。けれど、其処にはほんの少しの差異があって。

「オパールと、それからアクアマリンは、新くんの手の中、か。」

「はぐらかすなっつのオペラ!!…ああもう、帰るぞ!アクィに何言われるか判んねェ!!」

その差異に未だ、新が気付くはずは無かった。

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