「……結局、僕らの家か。まぁ、ココならNOISEもまだ知らないはずだしね。」
スリースピーカの暮らしていた家。その居間で、四人が四者四様の溜め息を吐く。
煌華が冷蔵庫から麦茶を取り出して、コップと共にテーブルの上に置いた。
「本部壊滅。初葉と秩太もどうなったか不明……戦力として数えられるのは、この4人だけかな。」
托人の言葉に、全員がもう一度溜め息をつく。
そして……煌華が、コップのほうに落としていた視線を上げた。
「3人とも。今更だけど、聞いて良いかな?……どうして、オーケストラとNOISEは闘ってるの?」
その煌華の言葉に新春と快斗が顔を見合わせ…托人を振り向く。托人が小さく頷いた。
「その話をしようと思ったら、NOISEの成立から話さなくちゃ。かなり長い話になるよ?」
「辛くても長くても、目を逸らさないと決めた。だから話してよ、昔の話を。」
そう言って煌華が頷き返したのを見届けて、托人はゆっくりと口を開いた。


〜Talking Painful Memories〜


「……3話から5話くらい回想しそうなのに全部グレイ文字にするのかな?」
「は?いきなり何を言ってんの兄さん。」
「いや、こっちの話だよスコア。」
『控え室:楽器持ち込み時の飲食厳禁』の看板が掲げられた部屋で、2人の少年がソファに座っている。
片方は音楽雑誌に目を落とし、もう片方…スコアと呼ばれた方は楽譜の整理をしている。
「……よし、オッケ。これで明日には渡せるよ。明後日から練習できると思う。」
スコアの言葉に、少年が雑誌から目を上げる。目の前には、楽譜の束が10前後。
「改めて、ウチのメンバーが少ないのが判るよね。」
「それは言わないの。……ウチは、ちょっと特殊だからさ。」
「そのウチに新メンバーが入るっつったら驚くか?」
「「父さん!」」
背後からの声に、2人が振り返る。ややヒゲを蓄えた中年のオジサマが立っていた。
その少し後ろに2人の、紫の髪をした子どもたちを見止めて、少年とスコアの目が少し曇った。
「君たちが、新入り?……歓迎、するよ。」
「…自己紹介は後回しにして、取り敢えず施設を案内しようか。」


「寮とか練習室とか、結構な施設だな。」
「全員がココで生活してるからね。と言っても15人も居ないけど。」
「で、一番大切なルールを覚えといてね。『他人の過去は詮索しない』。……ココは、ワケアリしか居ないから。」
少年の言葉に、案内されている2人が頷く。……『父さん』が連れてきたということは、この2人もワケアリだ。
「逆に、自分の過去を打ち明けるのは自由。そのときはちゃんと聞いてあげるのがマナー……かな。」
スコアが呟きながら微笑む。それに少しだけ苦笑しながら、少年が2人の子どもたちに向き直った。
「その所為で面倒な制約もあるんだよね〜……ウチのメンバーは、お互いを担当楽器で呼び合うの。」
「……名前が『過去の詮索』にあたる可能性があるから?」
「その通り。大きい方は物分かりが良いね。」
少年が、もう一度苦笑する。2人の子どものうち『小さい方』はさっきから首を傾げたままだ。
スコアが、練習室のドアをあける。中で、2人のチビッ子が睨み合っていた。
「あれ、また喧嘩してるの?シンバルもバイオリンも……飽きないねぇ。」
「「うっせスコア!だってコイツが!!」」
「放っといて良いよ、スコア。どうせお腹が空いたら終わります。」
「アレ、居たんだハープ。」
少し左に視線を変えれば、ハープを持った青年がこちらに手を振り返す。そして、はたと気付いた。
「……新入りさん、ですか?」
「そ。パートが決まらないと呼び方が決まらないっての、ホントに不便だよね。早く君らも決めなきゃね。」
少年が、もう一度苦笑する。2人の子どもたちが顔を見合わせた。
「…自分の過去を打ち明けるのは自由、だったな。なら、自分の本名を名乗るのもアリってことだよな。」
「…ああ、本名で呼んで欲しいならそれもアリだね。」
大きい方の子どもの言葉に、少年がニヤリと笑って返す。
「俺はヒビキ。この小さいのは弟のカナデだ。」
「……僕はタクトだ、以後よろしく。」


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