「五黒鍵?大層な肩書がついてやがるな。」
「つまりはNOISEの五大幹部、ってところですか?」
初葉・秩太の視線を受けて、苦笑する依織。
その苦笑のまま手を振り上げて……鞭を、振り下ろした。
「さぁ、やろうか……調教してあげるよ。」
「「悪いけど、遠慮する!!」」


〜Pealing Keen Sound 3〜


「初葉!!秩太!!」
「煌華……かっこ悪いトコ見に来たのかよ。」
「え?」
ひゅんっ!!
風斬り音と共に、初葉が衝撃で飛ばされた。
「秩太、どういう状況?」
「……彼の音、射程が長すぎるんですよ。初葉の音が届かないんです。」
秩太が、初葉に向けて回復音波を照射しながら説明する。
初葉が掌から攻撃音を発したが、風斬り音に掻き消された。
「遠隔射撃か……確かに、僕らには相性が悪い。遠巻きに削られ続ける。」
「無理やり近付こうにも、威力が高くて近付けない……流石は五黒鍵。」
「うるせェぞ後衛組!オレの獲物だ、黙って見てろ!!」
黙って見てたらなぶり殺しだ、と思ったが口には出さない程には今の煌華は危機感を感じていた。
攻撃手段が無い以上、今は拮抗でもいつかはコチラ不利に傾くからだ。
「……3vs1の数の利も、この状況じゃ利じゃないしね。」
「だから言ったろ?依織じゃ相手が悪いって。」
「「ッ…金丸新春?!」」
初葉・秩太が振り向く。その直後、初葉が風斬り音に吹き飛ばされた。
地面を数m滑って、他2人のすぐ横で止まる。
「他愛ないなァ、スリースピーカってこんなモノなんだ。」
「…仕方ねェだろ。所詮はタクトが造った人工物だ。やっぱ音は、ナマじゃなきゃな。」
依織が、スリースピーカの後ろに立つ新春を見止めて……
……その眼が、憎悪で歪んだ。
「久しぶりだな……オーケストラ打楽器隊の、シンバル君!!」
「今日こそ決着つけようか。NOISE五黒鍵、歌和斑依織サン?」

「その呼び名を知ってるってことは、やっぱり関係者なんだね。」
「言ってなかったっけ?俺はNOISE……と敵対する、オーケストラのメンバーだよ。」
「オーケストラ?聞いたこと無いな。」
「リーダーはお前らの製造者、"指揮棒のタクト"だよ。」
それを聞いて……煌華が、笑った。
「『全ての武器を楽器に』。同じ信念を胸に、オレたちも闘ってる。」
「確かに……僕らが、最初に托人に教わったコトだ。」


新春がスピーカの前に立ち、依織と対峙する。
「ちょっ、待てよ!オレの獲物だぞ、大体テメェ何なんだよ?!」
「静かにしてよ、初葉。……大丈夫、新春は僕らの仲間だよ。」
「オーケストラ、と呼ばれてましたね。……見せてもらいましょうか、どれほどか。」
ニィ、と笑って……依織が腕を振り上げ、新春が両手を構える。

鋭い音が、鳴り響いた。


「中距離での切断……か。両手を打ち鳴らすだけでモノを切り裂く能力とはね。」
煌華が、異常誘発で依織を気絶させて呟く。傍に、切り裂かれた鞭が落ちていた。
「コイツら4人の身柄は、オーケストラ本隊に引き渡す。それで良いだろ?スコーカー。」
「良いけど……君にその名前で呼ばれたくないな、シンバル。」
「そりゃ役職名だ。ついでに新春も偽名だしな。…本名は……」
初葉・秩太に聞かれないように……そっと煌華の耳の中へ、新春がひとこと囁いた。
「……絶対に呼んであげないよ、バーカ。」

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