「悪いけどさ。この2人は見逃してあげてくれないかな?」
少年が、2人の少年たちの頭をポンポンと叩いて、笑う。
それと相対する青年が、その言葉に少しだけ顔を歪ませる。その顔は、嫌悪。
「オレは自己犠牲ってのが大嫌いなんだよ。オーケストラ・マスターの次男のお願いでも、却下だ。」
「ケチだなぁ、ショウ君。こんなに小さい子を殺せるの?」
「小さかろうが、オーケストラだろ。っつーかお前と3つも違わないんじゃなかったか?」
相対する青年……ショウの言葉に、少年が苦笑する。そして、2人の少年を庇うように立った。
「じゃあ、力ずくで逃がすよ。僕が時間を稼ぐから、兄さんたちを呼んできてくれる?」
少年の言葉に、2人の少年たちが頷く。それを見て、少年も笑った。
「何があっても、諦めるな。頼んだよ、シンバル!バイオリン!」
「「……スコア!!」」



〜Mission Trojan Horse 4〜


「何があっても、諦めるな。……スコアの遺言なんだよ。ここで死んだら、スコアに顔向けできねェや!」
震羽の足を払い、立ち上がる新春。しかし、すぐに片膝を着いてしまう。
「根性論で何とかなるほど世界は甘くないぞ。」
「うるせェよ……打楽器隊式格闘術、『ラチェット』!!」
新春が力を振り絞り、身体を高速回転させる。そこから、四方八方に刃が放たれた。
「本来は遠心力を使った打撃技だけど……自分の能力と組み合わせた、か。並の防御じゃ詰みだな。」
五発ほど震羽に刃が迫る。しかし、それも全て身体に触れた瞬間に雲散霧消した。新春の回転が止まる。
「けど、オレには効かねェ。気は済んだかよ?シンバル。」
「ああ……相討ち、だな。」
新春の言葉に、震羽が気付く。この部屋は……このビルの、地下。慌てて周囲を見る。
先程の無差別攻撃で、部屋は崩れ始めていた。
「お前…!」
「……何があっても、諦めるな。後は頼んだぞ、スリースピーカ!!」
部屋が、瓦礫で押しつぶされた。


「勝てない勝負に挑んでいるわけじゃないさ。……何があっても、諦めないだけだ。」
快斗が長く息を吐いて、吠を見据えた。吠も身構え、両手を口元に当てた。
「何をする気か知らないけど、こっちも指向性を持たせる。威力も射程も、まだ上がります。」
吠が、笑む。快斗も、それを見て笑い……右手を自分の左胸に当てた。
「……オレには能力が二つある。左手のスポッティングと、右手のボウイング。」
快斗の左手が、吠に向かって差し出される。吠がそれを、睨みつけた。
「お前も知ってる『束縛』は左手。運動神経を『押さえる』、スポッティングの能力。」
「なら、切り札はボウイング。」
「感覚神経を『弾く、こする』。『五感操作』が右手の力だ。これで、オレの痛覚を消す。」
「それって、確かハープの……」
吠が身を硬くする。……快斗の行動が、読めてしまった。
「僕の肺喝猟を、突っ切るつもりか?」
「右手が届けばオレの勝ち。その前に倒れればお前の勝ちだ。」


「なんか、おっきな音がしたなァ。震羽かな、吠かな、意表を突いて盲かな?」
「ま、ずっと睨み合いってのもなんだし、僕らもそろそろやろうか?スピーカ。」
目の前でくすくすと笑う、五黒鍵の2人。対するスピーカ2人も、不敵に笑う。
「随分な自信だな。テメェら、どっちも遠距離タイプだったろ。この迷宮じゃあ効果半減だぜ。」
「それに、生身の君たちと違って僕らはサイボーグだ。持久力勝負もこっちに分がある。」
スピーカたちの言葉は、まさしく正論。現在の状況は、明らかにスピーカ有利だ。
だがそれをもってして尚、依織も跫太郎も笑みを深めていた。
「「そうだね、地の利は君たち……だからこれで、やっと対等だろ!」」

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