「どーする煌華。見殺すわけにもいかねェし、かと言って正体晒すのも…」
「……リーダーは煌華だ、君が決めて。」
初葉と秩太の目線を受けて、煌華が頷く。舞台を見やれば、跫太郎が嘲笑っていた。
「…見たところアイツの能力はタップ、つまり足音。音波同士なら、相殺できるよね?」
煌華の真っ直ぐな視線が、2人を射抜く。2人がため息を吐いて、そして笑った。
「気付かれねェ程度に、オレの音でアイツの足音掻き消せってわけね。…オッケ、任せろ。」
「じゃ、僕も行くべきだね。ついでに新春クンも叩き起こしてくるよ。」
「頼むね2人とも。…僕はココから、アイツに眩暈でも起こせないかやってみよう。」


〜Cannibal from Carnival 4〜


「客席に移動した?……なるほど、相殺狙いか。」
快斗の言葉を無視して、跫太郎がベースを構える。ため息を吐いて、快斗もギターを構えた。
「あんまりお客さん待たせても悪いし、行くよ?1・2、1・2・3・4!!」
リズムを取るかのように撃たれた足音に、客席から音波を照射して掻き消す初葉。
その横で新春に治癒音波をかける秩太。新春が頭を少しだけ左右に振った。
「キョータロの野郎、覚えてやがれ……!煌華は?!」
「舞台裏で、アイツらに異常誘発の音波試してっけど?」
「無駄だね、防人跫太郎は『跫音』で『防音』だ。何やったって届かないよ。」
横から聞こえてきた声に、3人が振り返る。そして、その顔を引き攣らせた。
「「「た……托人ォ?!」」」
「あの子は周りの空気の流れを止める力がある。空気の振動である音波なんか届かないよ。」
「……初葉、秩太。お前ら、ここで客を頼んで良いか。」
2人が、托人に向けていた目を新春に向けなおした。新春が、ニヤリと笑う。
少しだけヒく2人と対照に、托人がそれを見て苦笑した。
「何、まだこないだのこと根に持ってんの?」
「キョータロ程度に躓いてちゃ、スコアの仇には届かねェだろ。」
舞台裏へと走っていく新春を見送って、初葉と秩太が首をかしげた。
「「……スコア?」」


「どんな小細工を弄したか知らないけど、まぁ正直無意味だよねェ…」
一曲目が終わった直後、跫太郎が呟く。快斗がアンプを調節しながら振り返る。
ため息を吐く、瞬間。……会場の、全ての照明が落ちた。
「なっ…停電?策か偶然か……どちらにせよ!」
舞台裏を振り向く。2つの人影が、舞台へと走りこんでいた。
「どーせシンバルとスコーカーだろ?快斗、片方お願いね。」
「オーケストラがそう簡単に1vs1に持ち込んでくれると思うか?」
少しだけ笑って、跫太郎が右足を挙げる。…その足が、振り下ろされることなく止まった。
「…音で相手を縛り付ける…快斗?」
「言ったろ。オーケストラが、そう簡単に1vs1に持ち込んでくれると思うか?」
「防人跫太郎。この舞台に……アンタの味方なんて、居なかったんだ。」

「お前は今は学園祭のことだけ考えてりゃ良いさ。」
「NOISEの2人のことはどうするつもりだよ、新春。」
「2人?NOISEは1人だよ。異世快斗はオーケストラ、弦楽器隊のバイオリン・手琴快斗だ。」
「……托人、そういう大事なことは先に言って下さい。」
「どこから情報漏れるか判んないからね。それからもう1つ!防人跫太郎には、弱点がある。」


「アンタの『防音』能力には弱点がある。」
「…何だろね。オートじゃないから、さっきみたいな不意打ちには効かないってことかな?」
防音能力を発動し、縛られた右足を解く。その直後、煌華の右手が眼前に迫った。
「空気の流れを止めるから、長時間顔狙いで音波を浴びれば酸欠を起こすってことだよ。」
「……ここで僕が負けたらどうなるのかなぁ?」
「捕らえて、タクトが本部に送って、そっから情報収集じゃねェの?」
シンバルの答えに、くすくすと笑う跫太郎。そして、舌を突き出した。
「拷問されたって音漏れなんてしないさ。僕は腐っても、五黒鍵だ!」
宣言した跫太郎が、舌を噛み切る…その直前に、新春の拳が鳩尾に決まった。
「目の前で自殺なんかさせっかよ。こっちだって、腐ってもオーケストラなんだ。」
跫太郎が、小さく笑って倒れる。その直後に、照明が復帰した。
『おっとぉ?!こ、これは停電中に何があったのか?!』
MCの言葉に頭を抱える3人。客席から戻ってくる初葉と秩太を見て、快斗がマイクを取った。
『スミマセン。防人の奴が倒れちまったので、急遽最後のグループと合同にさせて下さい。』
『そしてェ!!緊急助っ人、ドラム担当の金丸新春でっす!!』
快斗と新春のマイクパフォーマンスに、スリースピーカの3人が呆れた表情を浮かべる。
振り返った2人が、ニヤリと笑ってウインクした。……ため息を吐いて、煌華がマイクを受け取る。
『…ドラム、新春!ベース、初葉!キーボード、秩太!ギター、快斗!そしてボーカルは僕、煌華!』
『さぁ皆、最後の1秒まで気ィ抜かずに盛り上がれェ!!』


「あの停電は偶然だったけど……お陰でこっちの勝ち。これで五黒鍵もあと2人だね。」
托人が、5人の演奏を見ながら呟く。視線を感じて振り返れば、客の1人と目が合った。
「マグレは何度も続かないぞ、タクト。」
「じゃあ依織はマグレじゃないって認めるんだ?」
お互いにゆっくりと近付き…そして、睨み合う。
「次はどんな手で来るのさ、NOISEのリーダーさん?」
「そうだな……お前と同じ手でも、使ってみるか?」

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