ずっと願っていたこと、ずっと望んでいたこと。
……すべていつだって、突然叶う。


〜たとえば、こんな週末 8〜


刃が振り下ろされた、瞬間、状況は一変した。
一歩退いた裕の代わりに、別の少年が、その刃を握る四月一日の手首を受け止めていた。
「はい、遊びはそろそろ終わりだよ。」
苦笑交じりの声でそう言って、その少年は、裕のほうを振り向いた。
…左耳に灰色の十字架。そして裕を見て、その瞳が嬉しそうに細められた。

「久しぶりだね、ユーン。会いたかったよ。」
「…まさか……ケン、か?」

裕の瞳が、驚愕で見開かれた。目の前に突然現れた、その少年は……
「飯田橋、邪魔をするんじゃねェよ。」
2人の間の沈黙が、四月一日によって破られた。『飯田橋』と呼ばれた少年が、苦笑を漏らして再び振り向く。
「…そろそろ限界でしょ。清一くんに身体を返しなさい、四月一日くん。」
……チッ、と、四月一日の口から舌打ちが聞こえて。
手に持った刀がペットボトルに戻るのと、四月一日の意識が途切れるのは同時だった。
「おっと。まったく、ワタヌキくんの二重人格にも困ったものだよ。迷惑かけたね、ユーン。」
「待てよ、待ってくれ!ワタヌキのことも気になるけど、その前に!」
気絶した渡貫の身体を受け止めた少年の、その肩を、裕が掴んだ。
…少年がふたたび、裕のほうに視線を向ける。
「……ケン、その耳のロザリオ…まさかお前が、6人目の適合者なのか……?」
「……そうだよ。清一くんの『斑』と違って、僕のコレは本物だ。
 3年くらい前かな。僕がこの、『灰の獣王』に適合したのは。」
ころころと笑う少年の、耳元で灰色の十字架が揺れる。
それを見て、裕がグッと、痛みを堪えるかのように眉を寄せた。
「……死んだと思ってた幼なじみが、まさかオレより歳上になって、
 そんな"重たいモン"背負って帰ってくるとか、予想してねーんだよ……!!」
「あっはっは。そうだね……確かにそうだ。」
絞り出すような裕の言葉に、返す少年の笑い声はひどく乾いていた。


「さて。いろいろ言いたいことも聞きたいこともあるだろうけど。
 清一くん寝かせなきゃだし、続きは明日でも良いかな?」
「あぁ…お前もこのアパートに住んでるのか?」
「そうだよ、清一くんと2人暮らし。だから、明日みんなでおいでよ。」
気絶した清一の身体を何度か抱え直しながら、少年はそう言って笑う。
「……『みんなで』、か。」
「そう。適合者6人水入らずで、いろいろと話をしよう。……じゃあまたね、ユーン。」

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