オレたちは月無き夜空を征く。
十字架を背負い、獣のように。


〜たとえば、こんな週末 7〜


「もしもし、ヤクモ?ちょっと、今すぐ調べてほしいことがあるんだけど。」
『……裕、お前ら自営業と違って公務員は忙しいんだよ。』
「アァ?こっちこそ、昨日テメェの依頼を秒速で済ませてんだよ(慎也が)!なんだよ、3人分の転校書類の偽造って!!」
桃色のアンマンをかじりながら、裕がケータイ端末に向かって声を荒げる。
端末の向こうから、ヤクモが大きく溜め息を吐いたのが聞こえた。
『分かった分かった、騒がしい。で、裕、何を調べろって?』
「できるだけ、なるはやで、個人情報をかき集めてほしい奴がいる。頼むぜ、悪徳警官。」



月の無い、夜。商店街から少し遠いアパートの屋根に、裕が降り立つ。
「その日のうちに来るとは、行動が早ェな。よろず屋『クライング・スマイル』の一崎サン?」
「……オレたちのこと知ってて接触してきたのか?昼とキャラ変わってんぞ。」
背後からの声に裕が振り返る。……髪型も崩し、眼鏡も外しているが、昼のあの青年。
「ま〜職業柄、『裏』のことには耳聡いんでな?…そっちだって、少しは俺のこと調べてきただろ?」
「…私立聖命高校2年の渡貫清一くん。いや、それとも、封印屋の『セイウチ』って呼んだほうが良いか。」
「今日の今日でよく調べたなァ。でも、"渡貫清一"は昼に会ったアイツだ。」
パシッ、と、青年が、軽く放り投げたペットボトルを掴んだ。

……その直後、ぐにゃりと、ペットボトルが一振りの刀に変化した。

「二重人格キャラでな。俺は"四月一日"、荒事が大好きだ!」
「どっちも読み方"ワタヌキ"じゃねーか!」
青年…四月一日が振るった刃を、裕がバックステップで避ける。
そこに追撃の突き。迫る刃が、その途中で槍の穂先へと変化した。
「手に持ったモンを武器に変える……のが、斑の能力か?」
身体を軽くひねった裕の、その左頬から数cm先を槍が横切っていく。
「ご名答だが、だったら何だ?!」
「…だったら、オレたちの探してるモノじゃねーな。総太の下位互換だ。」
裕の右手が、槍の柄に触れた。

触れた瞬間、その槍がぐにゃりと、元のペットボトルに戻った。

「っ……キャンセル能力か!」
「ご名答だ。『黒の暴君』は、相手の能力を無効化する!」
驚愕する四月一日。ニヤリと笑う裕の、胸元に漆黒の十字が揺れた。
「悪いが天敵だったな、ワタヌキ。
 お前が持ってるモンは違ったけど、他にロザリオ情報を知ってれば教えてくれよ。」
「……ハッ、嫌だね。『斑の盟友』!!」
勝負は終わった、と、裕の気が緩んだ一瞬。
再度ぐにゃりとペットボトルが変形した刃を、四月一日が振り上げた。
「なっ…まだやる気かよっ!」
「あぁ、まだ、遊ぼうぜ。」
そして刃が、振り下ろされた。

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