探しものは7つのロザリオ。集まったのは5人の適合者。
……残る2つは、未だ行方知れず。


〜たとえば、こんな週末 6〜


1階は雑貨屋となっているクライング・スマイルの、2階から上は店員たちの居住区。
個人の部屋がある3階から裕が2階のリビングに降りてくると、その日居たのはタッジオだけだった。
「……あれ、タッジオだけ?」
「誠人さんはセータくんを連れて夏物のお洋服を見に行きました。ガブリオさんとレシィさんは1階で店番です。
 それから慎也さんと摩紘さんは地下で調べものを。……総太兄ちゃんはサボりでどこか行っちゃいました。」
リビングのテーブルに広げた『夏休みの宿題』を片付けながら、裕の問いにタッジオが答える。
ちなみに1階は店、2階から上は居住区だが、地下階は『裏』の仕事部屋になっている。
「ふーん…じゃあ、タッジオ。ちょっと散歩に付き合ってくんね?」
ニヤリと笑って言う裕に、タッジオが首を傾けた。


「中華団欒料理店・夏季限定の特製桃アンマン……ですか。」
「おひとり様2つまでって書いてあってなぁ。タッジオにも1個おごってやるからさ。」
つまり裕さん3個食べる気なんですか、という言葉を、タッジオは口から出る寸前で飲み込んだ。
目的地は同じ商店街の中華料理屋さんだが、商店街のほぼ端と端なので確かに軽い散歩だ。

……その道すがら、ちょうど中央の噴水広場が見えてきた辺りで。
前を行く青年が、ポケットからハンカチを出そうとして手帳を落とすのを目撃した。
「あっ…あの!手帳、落としましたよ!」
タッジオがそれを拾って、前の青年に声を掛ける。その青年が、足を止めて振り向いた。
…七三分けに近い黒髪にスクエアの眼鏡、如何にも真面目そうな高校生。
ただ、その右耳に、雰囲気には不似合いにも見える斑色のロザリオが下がっていた。
「あぁ…ハンカチに引っ掛かったのかな……気付かなかったよ、有り難う。」
「……そのドロップ・イヤリング、校則違反じゃねーの?」
裕が、自分の左耳に触れながら言う。青年が、自分の右耳に下がるロザリオに触れて苦笑した。
「大切なものだから。……君も、似たようなペンダントを着けてるね。漆黒で綺麗だ。」
青年の言葉に、耳に触れていた裕の指が、胸元のロザリオに動いた。
……確かにコレは、裕にとっても『大切なもの』だ、が。
「では、僕はこれで。手帳拾って頂いて、有り難う御座います。」

去っていく青年の、その背に視線をやる裕。タッジオが、上目遣いで裕を見上げた。
「…裕さん、あのロザリオって……」
「……タッジオが気にすることじゃねーさ。今夜、確かめてくる。」



裕のペンダント、『黒の暴君』。
誠人のベルト通しに提げられた、『翠の賢帝』。
慎也のカバンに結び留められた、『黄の覇者』。
総太の右手首に括り付けられた、『蒼の英雄』。
摩紘がポケットに突っ込んでる、『紅の魁帥』。
……7つのロザリオのうち、5つはクライング・スマイルに集まっている。
残る2つは、未だ行方知れず……

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