譲れないものは、誰にでもある。
相容れない奴も、きっと。


〜たとえば、こんな週末 5〜


クライング・スマイルの店内で、碧の髪にニット帽の少年がパタパタと動き回って仕事をしている。
その様子を、レジカウンターに頬杖をついて白い髪に赤いキャスケット帽の少年が眺める。
「レシィ。いっつも客も居ないんだし、そんなに毎日きちんと棚の整理する必要あるかぁ?」
「えー、まぁ働いてるというよりも時間つぶし……だってヒマじゃない?ガブリオ。」
レジからのガブリオの声に、振り返ってレシィが苦笑した。閑古鳥鳴く日曜の昼下がり。


カランカラァン、と、ドアに据えられたベルが来客を告げた。
「いらっしゃいませー!ようこそ、雑貨屋クライング・スマイルへ!」
来客―…ぶかぶかの服を着た、小中学生くらいの少年…―に、レシィが接客しようとにこやかに近づく。
「……雑貨屋?あれ、何でもやってくれるよろず屋だって聞いてたんだけど。」
「あー、お客さん。それなら裏口に回ってくださいな。こっちは『表』なんで。」
客の言葉に、ガブリオがめんどくさそうに答える。
その答えを聞いて、客の少年がレジの…ガブリオのほうに目を向けた。
「あー、表裏そうやって住み分けてるのか。面倒だな……ところで、」
少年が、ぶかぶかの袖に隠れた両手をパンっと打ち合わせた。
「…レシィ、伏せろッ!!」

立ち上がったガブリオの声と同時に、一閃。
いつの間にか少年の右手に握られていた刀が、レシィの頭上を横薙ぎに掠めていった。

「…僕は妖怪退治屋の玉鋼鋳也。バケモノは、狩るべきだ。」
……避けた弾みでニット帽の脱げたレシィの頭には、湾曲した角。
立ち上がってキャスケットの脱げたガブリオの頭には、白い毛並みのイヌ耳。
「オレたちは人間だ。見ず知らずの馬鹿が、人をバケモノ扱いすんじゃねーよ!!」
レジカウンターを飛び越えて、ガブリオがレシィを庇うように前に出る。
…数秒、ガブリオと鋳也が睨み合って……フッと、鋳也が持つ刀が消えた。
「ヤメタ……飼い犬殺すのは、趣味じゃない。それに…人探しを頼みたいんだ。また来る。」
「…客を門前払いしたら店長に悪いからな。客なら客らしく、裏から来い!」
ガブリオのその言葉に、鋳也の無表情が少しだけ崩れた。

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