おとなになんて、ならなくていい。
何度そう言っても、おとなになりたがる馬鹿は居る。


〜たとえば、こんな週末 4〜


総太が、商店街のまばらな人の波を、噴水の縁に腰かけてぼんやりと眺めていた。
そうしているうちに首のロングマフラーが風にふわりと流されて、その端が水の中に……
「あぶないよ、総太兄ちゃん。」
パシッ、と、水面に落ちる直前にマフラーが掴まれた。
「おー、イズル。今日は…日曜だからガッコー休みか。」
「うんっ。タッジオお店にいる?遊びに連れてってもいーい?」
「おう、連れてけ連れてけ。タッジオの奴、また店で仕事手伝ってっから。」
「総太兄ちゃんはお仕事しないのー?裕兄ちゃんに、またサボってるって怒られちゃうよ。」
マフラーを握って悪戯っぽく笑うイズルに、総太も同じようにニヒヒと笑って返す。
総太はサボりの常習犯だ。そしてそれを、店の誰一人として本気では叱らない。
「子どもは遊ぶのが仕事だぜ〜?この国じゃあオレの歳も子どもなんだろ?」
「まぁそーだねぇ。でも他の皆はちゃんと仕事してるんでしょ?」
「なぁ。どいつもこいつも、無理におとなになろうとしなくて良いんだよなぁ。」
そう言って、総太はあくびを一つ。


「馬鹿にするな、戦場に出れば歳など関係ない!君は騎士としての僕を侮辱している!!」


「僕だって皆さんの役に立てる!努力はしてきた!それを認めてよ、総太兄ちゃん!!」



「……ほんと、どいつも、こいつも。もっと子どもでいてくれよ。」
「…そのドイツもコイツもって、タッジオも入ってるの?」
そう言って首を傾げるイズルを見て、総太は安心したように笑った。
「タッジオは働きたがりだからなぁ。だからイズル、あいつをどんどん遊びに連れ出してやってくれ!」
イズルのような『子どもらしい子ども』が、あのタッジオの隣に居てくれて良かったと思う。
りょーかい、と言ってイズルは再び悪戯っぽく笑った。

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