君のその、少し長い髪に触れる時間。
何よりも大切な、朝のひととき。


〜たとえば、こんな週末 3〜


「さて。おいで摩紘、座って。今日はどうしようか?」
「いつも通り、好きにしろ慎也。」
「それじゃ、今日も三つ編みにしよ。」
朝食前の、まだ早い朝の時間。共用リビングの一角で、櫛を持った慎也が手招きをしている。
溜め息を吐きながら摩紘が椅子に腰かけると、慎也がその前髪にさらりと指を通した。

「綺麗な髪なのに、勿体ない切り方するよね摩紘は。」
「自分の髪なんて、どうでもいいからな。」
摩紘の髪の切り方は『片手で前髪を掴んで、もう片手に持ったハサミでバツン!終了』だ。
そのせいで前髪は斜めパッツンみたいになっているし、右側にひとふさ長い髪が残っている。
……その長いひとふさを手に取って、慎也が三つ編みに編み上げていく。
「摩紘は自分に無頓着が過ぎるよ。……まぁ、摩紘の『自分嫌い』は知ってるけど。」
「慎也も人のことを言えないだろうが。まぁ、慎也の『他人嫌い』は知っているが。」
真正面に向かい合って自分の髪を結い上げる慎也の、その眼を隠す長い前髪に摩紘がそっと触れる。
「……この店の人たちは嫌いじゃないよ。誰かさんのお陰でね。」
髪を少しだけ払えば、その向こうの慎也の瞳が真っすぐに摩紘に向いた。


「これから先、何があっても、オレがお前を守る。だから大丈夫だ、慎也。」

「僕は君を信じてる!だから、だから……!君も君を信じてよ、摩紘!!」



「……ほら、終わったよ摩紘。」
綺麗な三つ編みに結い上げられた摩紘の前髪が、ヘアゴムで留められる。
「ああ、有り難う慎也。」
慎也の前髪に触れていた摩紘の手が、ゆっくりと離れた。

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