霜天駅前商店街の端っこに、その雑貨屋はある。
……クライング・スマイル。これは、その店のお話だ。


〜たとえば、こんな週末〜


AM6:30。黒瞳黒髪の少年、一崎裕が、アクビをひとつしながらリビングへの階段を降りる。
「あ、裕。おはよう、今日も早起きだね。」
「オハヨ、誠人。先に起きてる奴に言われたくないセリフをどーも。」
リビングでホットカフェオレを飲んでいた小柄な少年…野辻誠人の、その隣の席に裕が座る。
誠人が裕の前にコーヒーの入ったカップを置いたところで、再び階段を降りてくる足音がした。
「おはようございます、お二人ともお早いですね。」
「あぁ、おはよ、セータ。」
耳の尖ったノームの少年セータが、ひょこりと頭を下げた。
「セータもこっち座りなよ。副店長命令!」
笑いながら誠人が手招きをする。
他のメンバーが起きてくるまで、3人で過ごす朝の時間。


AM11:00。クライング・スマイル、開店。裕店長、たまにはお店に。
「珍しいね、裕。店に顔出すなんて。」
「うっせェぞ慎也。明日は雨だとか言いやがったらぶん殴るからな。」
棚の商品を物色していた少年が振り向く。経理担当、永緒慎也。
商才の無い裕に代わって店を切り盛りしているのは、この慎也と…
「慎也、この商品はどの棚に……あれ?お疲れ様です、店長。」
「え、店長?!うわホントだ珍しっ、雪でも降るんじゃね?」
慎也に雇われた2人の従業員、レシィとガブリオ。
「あっははは、いいねガブリオ!雪なら殴られる心配ないや!」
大笑いする慎也、そんな慎也に呆れるレシィ、目を丸くするガブリオ。
この店の、店長の立場の低さがよく分かる。


PM3:00。散歩。商店街の中央噴水広場で、見知った顔を見つけた。
「あ、裕さん!お散歩中ですか?」
「よォ、タッジオ。誰かと待ち合わせでもしてんの?」
灰色の髪の少年が裕に手を振って小走りで近づいてくる。タッジオ=アンシェンベル…居候。
一応はクライング・スマイルの従業員でもあるが、小学校に通ってるので実質的には働いてない。
「タッジオー!あ、裕兄ちゃんも居る!こんちわ!!」
「イズルくん!……と、なんでハンプティも居るの?」
掛けられた声に振り返れば、藍色の髪の少年イズル……と、その後ろに、イズルの父親ヤクモ。
「そう嫌そうな顔をするなよ、イヴィル。裕に伝言を頼もうと思ったんだが、本人が居るならちょうど良いな。」
タッジオはヤクモを"ハンプティ"と、ヤクモはタッジオを"イヴィル"と呼び合う。そしてすごく仲が悪い。
睨みつけてくるタッジオに苦笑して、ヤクモが裕のほうを振り返った。


PM8:00。クライング・スマイルのもうひとつの仕事、開始。
「ヤクモ経由の依頼って、いっつも面倒なんだよなぁ。総太、摩紘、後ろ頼むぜ。」
「今日の依頼は害獣駆除じゃなかったっけ〜?どう見てもバケモノ退治だろコレ。」
前髪に蒼いメッシュが入った、背丈ほどの棍を持つ少年…村守総太が苦笑する。
周囲を囲む群れはどう見てもただの獣ではない。モンスターの類だ。
「まぁ、モンスターも害獣ではある。……どんな奴だろうと、倒せば良いだろう。」
「あながち言ってること間違ってはねェな。ま、オレら3人なら余裕だろ。」
二又に分かれた槍を携えた少年…摩紘の言葉に、裕も頷く。
「じゃ、今日も頑張って、『依頼』をこなそうか!」
クライング・スマイルのもうひとつの顔。『依頼』を受けて仕事をする、裏世界のよろず屋。
裕の言葉に、総太と摩紘も武器を構えて動き出した。



そしてPM11:00。依頼を終わらせて帰路に就く。
……たとえば、こんな週末も。この店には日常茶飯事だ。

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