龍は空に昇って、雲になる。
煙は空に昇れど、煙のまま。


〜トランキライザー〜


「ヒマだね、店長。」
キッチンとフロアを繋ぐカウンターに肘をついたユーセーが呟く。
「褒められることじゃないんだけどねェ……」
その呟きに、キッチンの店長が答える。
傍で聞いていたロンも苦笑いだ。ファミレスがヒマなのは良いことではない。
店長がマッチを擦り、銜えたキセルに火を入れた。
「……ジュゲムもだけどさ、身体に悪いぜ?」
「精神安定剤みたいなものよ。」
「いやいや、それ依存症じゃないですか?」
煙が、換気扇の向こうへ消える。
それを見送って、店長がもう一度煙を吸い込んだ。
「そのデザインはかっこいいと思うけどさー…」
「デザイン…ああ、雁首の部分に龍が居るんだ。確かにユーセー好きそう。」
「ええ、龍。空に昇って雲になり、そしていずれ自由になる。」
店長が、意味ありげに微笑む。煙が一筋、換気扇へと昇っていった。

「まぁそれはともかく。ヒマは悪いことじゃないのよ?」
「いやいや、此処ファミレスだよ?」
「ま、良いことでもないのは確かだけどね……」
そう言いながら灰を落として、もう一度マッチで火を入れる。
再び立ち込める、煙。
「この店はね、精神安定剤みたいなものよ。」
「「………は?」」
「ただ『食べる』ための場所じゃない。『出会う』ための場所なの。」
煙の向こうの唇が、笑みを形作る。


「ボクらは、貴方に救われたんだ。」
「オレらも、誰かを救える人になりたい!」
「どこかに……貴方達を待ってる人が居るなら。」



「いつか出会う『誰か』のために、この場所は在るの。」
「いつか出会う誰か、ね……」
「貴方達も出会うわ、いつかきっとね。」

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