人の秘密は、知っておきたい。
僕の秘密は、知られたくない。


〜ポラロイドカメラ〜


カシャッ!!
とシャッター音が聞こえて、換気扇の下でタバコを吸っていたジュゲムは顔をあげた。
「……何してんだ友誓。」
「見て判ンだろ?写真撮ってんだよ。」
顔を上げた先には、ポラロイドカメラを構えて笑うユーセー。
ちなみに『仕事は?』なんていうツッコミはこの店には無意味だ。
「僕も写真は好きだけど、どうしたのいきなり?」
そこに、手持ち無沙汰すぎて消耗品の補充(3回目)をしていたモミジが会話に混ざってくる。
「おうモミジ。いや実は商店街で『自慢の職場コンテスト』やるんだとさ。」
「その為の写真撮影か。じゃあライバルは雑貨屋のクライング・スマイル辺りだな。」
「ワースト1を競うライバルならね。」
ジュゲムもモミジも、自分たちが商店街で1・2を争うダメな店だということは知っている。
「いーんだよ、こういうのは参加しとくことに意義があるんだから!」
そして、当然ユーセーだってそんなことは理解している。
「でもそれなら、折角だし僕が撮ろうか?僕のカメラはきっとこれより高性能だから、ね。」
ユーセーが手に持つカメラを指で軽く撫でて、モミジがふわりと笑った。


「君はどうしたい?カメラ。」
そう『主人』に言われたのは、あれは4年ほど前だったか。
「造りたかったモノが完成したからさ。君らはもう要らないんだ。」
淡々と話す、目の前の『主人』。……名前は知らない。知る必要もなかった。
いずれ、廃棄されることは知っていたから。
「不満そうな顔……は、してないか。理解してるって顔だね。」
「僕は『記録』。それに『分析』する脳も頂いてます。」
「その2つから、手に入れたのは『予想』かい?」
この人が、どれだけ『アレ』の完成を夢見ていたか、知っている。
この人が、何のために僕を造ったのかも、理解している。

けれど、だからこそ僕にも、譲れないものが在る。

「逃げても、宜しいですか?」
「追いかけないよ、好きにするといい。」
コレはこの人の優しさじゃない。きっとただ、僕に興味が無いだけ。
その興味の無さが、有り難かった。
「死にたくなったら来なよ。……君は、『人』にはなれないんだから。」
「どうでしょう?案外、やってみなければ判らないものですよ。」

「「……さよなら。」」



「いや、今回はオレが撮りたいんだ。ありがとな、モミジ。」
「いえいえ、また気が変わったらいつでもどうぞ、ユーセー。」
そう言ってモミジは、ユーセーに向かってウインクをした。

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