「……ごめん少し遅れたね。久しぶり、ウーファー、ツイーター。」
白を基調とした部屋。入ってきた1人の少年が、先に部屋に居た2人の少年に告げた。
「リーダーが一番遅いとか、どういうことかな〜スコーカー?」
「意地悪を言わないの、ウーファー。お互い無事で何より。」
入口から見て右に座っていた少年が悪態を吐くと、左の壁に寄りかかっていた少年が窘める。
最後に入ってきた少年――スコーカーが、部屋の中を軽く見回した。
「……来れたら来るとは言ってたけど、托人はやっぱり来てないか。」
「なんでアイツが『指揮棒』なんだよ、むしろ狂わせてるだろアレ。」
「まぁまぁ、托人には托人なりの考えとか…無いかな、あの人には。」
左右からの言葉に、ふぅ、とスコーカーが小さくため息を吐いた。
「…ま、托人から僕らスリースピーカへの指令は預かってるから良いけどね。じゃあ、本題に入ろうか。」


〜Starting School Daze〜


「私立鐘ノ音学園高等学校から転校してきた、深水煌華です。よろしく。」
「同じく!鐘高から来ました、小夜楢初葉です!」
「えっと、更に同じく、鐘ノ音学園高校から来ました、主計秩太です。以後、よろしくお願いします。」
市立霜天高校、1年1組の教室。3人が三者三様の自己紹介をすると、教室中がザワザワとざわめいた。
転校生が3人来て、3人とも同じクラスに編入、しかも3人とも同じ学校から来たというのだ。
騒ぐなという方が間違っている。明らかにおかしい。
……深水煌華はスコーカー、小夜楢初葉はウーファー、主計秩太はツイーターだ。
(托人も、もう少し気の利いた情報操作は出来なかったのかな……)
煌華が、誰にも聞こえないように小さく呟いた。
担任教師から座る席の指示を受けて、スタスタと自分の席に向かう。
カタリと小さな音を立てて席に着くと、隣の少年が話し掛けてきた。
「始めまして、金丸新春だ。よろしくな、深水クン?」
「……よろしく、金丸君。」
「おうヨロシク〜。で、タクトって誰?」
新春の一言に、煌華が思わず振り向く。目が合った新春が、ニヤリといたずらっぽく笑った。
「俺は耳が良いんだよ。」
「……ふざけないでくれないかな。お前、何者だ?」

「金丸君、もう転校生と仲良くなったのかな?やるね〜。」
初葉の隣の席の少年がからかい口調で呟く。そして、初葉に向き直った。
「ま、僕らも金丸君たちみたいに仲良くしようよ。えっと…サヨナラ君?」
「ウイハで良いよ。アンタは?」
「雑賀音穏。こっちもネオンって呼んでよ。女みたいな名前だけど。」
「それいうなら、俺の初葉だって女みてェだろ。アイコだ。よろしく、ネオン。」
初葉が右手を差し出す。少しだけ考えて、ネオンもその手を取った。
「よろしく、ウイハ君。」

「煌華も初葉ももう友達作ったのか…すごいな。」
ふぅ、と小さくため息を吐いて、初葉から視線を外す秩太。
その頬を、後ろの席の少年―いや青年と呼ぶべきか―が引っ張った。
「い、いひゃい、いひゃい!!ど、どなたですかっ!!」
「そうやって消極的に話し掛けられるの待ってたら、友達なんて出来ないぞ?」
秩太が後ろを振り向くと、後ろの席の青年は爽やかな顔で笑った。
「はじめまして、潮騒響だ。この学校でのお前の友達一号。に、なりたいと思ってんだけど。」
「え?あ、はい、よろしくお願いします、潮騒さん。」
「響で良いって。俺も秩太って呼んで良いか?これから、宜しくな。」



「お帰り、3人とも。」
「「「托人!!」」」
放課後。あてがわれた家のドアを開けると、リビングから1人の青年が顔を出した。
彼こそが托人、煌華たちスリースピーカの主人だ。
「どうだった?"煌華"・"初葉"・"秩太"の初めての一日は。友達出来た?」
「あ〜、一応。ネオンって奴が。」
「潮騒響さん、って方と友達になりましたよ。」
「へー、ネオンにヒビキかぁ………煌華は?」
初葉、秩太が答える中で、1人だけぶすっとしている煌華。
「アレ?煌華、あの…なんだっけ、金丸とかいうのは?」
「…ただのクラスメイトだ、友達なんかじゃない。」
「煌華、何か荒れてる?」
「荒れてないっ!!」
トゲトゲとした言葉で会話を打ち切り、自室に入ってゆく煌華。
それを見送って、残された3人が顔を合わせた。



そして、一方その頃。とあるビルの地下室に、新春は居た。
「戻った。遅かったなとかそういうお約束なセリフは勘弁な。」
「遅かったな。」
「ちょっ、人の話を聞いてくれないかな震羽さん。」
新春が挨拶をすると、震羽と呼ばれた青年がため息を吐いた。
「スコーカーと仲良くなったんだって?」
「ん〜残念、好きなのはこっちだけで、向こうからは嫌われてるっぽいぜ〜?」
「アレらにあまり感情を置くなよ。アレはタクトの道具だ。」
その震羽の言葉に、新春が少しだけ不快感を顔に出した。
「クラスメイトと仲良くするくらい許してほしいね。目的は忘れないから、さ。」

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